それは本当にストレス解消になってますか?個人のトレードオフと罪悪感

そもそも「トレードオフ」とは?見えない選択と資源の配分

トレードオフは相反する関係、どっちつかずの関係という 意味で経済やビジネスでもよく使われる言葉です。 世界の限りのある資源を割り振りながら 、家計や社会は成り立っています。 しかし、単に限りがあるだけでは人々の欲求 というものは満たせません。

限りがあり、さらに人々が価値を感じるものを 「希少性」と呼びます。 この希少な資源を配分するため 家計も社会も多くの選択をしています。

希少な資源は 多くのものに配分をすれば 一つあたりの利益は充分ではなくなり、 一つあたりの利益を上げようとすれば 多くのものに充分に行き渡らなくなります。

これがトレードオフです。

何かを得る。何かを失う。

このトレードオフの考え方は社会だけではなく、個人にも当てはまります。

「お金」の場合、何かに1000円出費したとしたら、 別のものへの出費を1000円削ったことになリます。

「時間」の場合、何かに1時間使ったとすれば 、別のものへの時間を1時間削ったことになります。

お金でも時間でも 何かを選択したら何かを選択しなかったことになります。

誰かと結婚したら誰かと結婚しなかったことになるし(法律的に限りがある)、 野菜を食べれば健康的になるのにピザを頼んでしまったり(胃袋の容量にも限りがある)、 運動する時間を動画やネットサーフィンに使ってしまう(時間には限りがある)。

社会だけではなく、個人においてもトレードオフは 見えないけれど常に存在しています。

見えないものにも限りがある

Q:トレードオフで犠牲になるのはお金とか資源だけじゃなく 「時間」も含まれるんですか?

A:そうとも言えます。私達人間の生きる世界での資源は 目に見えるものと、見えないものがあります。 目に見えずとも限りのある希少な資源 、それが「時間」というものです。

多すぎる選択と迷い

ここまで「トレードオフ」について説明しました。 経済でも取り扱われるものを なぜこのサイトでも取り扱うのか?

それは選択の迷いはトレードオフの問題 というものに直面しているからです。 迷いのある人間は行動の選択において トレードオフを認識し、 これを選択したら これが選択できなくなってしまう。 という状況にしばしば陥っています。

この両立できない複数の選択を選べず、それとはまた別の選択 を強いられて、罪悪感を感じるような結果になってしまいがちです。

ストレス解消、誘因、罪悪感。

人間は誘因(インセンティブ) に動かされやすい生き物です。 私達のストレス解消という行動も それに当てはまるのかも知れません。

選択をしないという選択に よって、それとはまた別の「誘因が付随する選択」 を実行することで 苦しみや迷いになりやくなります。

一方を選ぶことによって 一方を捨てるだけではなく、 誘因によって 両方を捨てている 選択があることを知り対策をすることで、個人の日常における行動もより楽しくなるでしょう。

人の選択が誘因に反応するなら 、この男は美人に反応する!

こんな話がいつかのある職場であった。

トレードオフを知り、日常でもそれを意識する男(以下トレ男)は仕事終わりに上司の自慢話を聞かされていた。

この時、彼が1番優先したいのは帰宅して本や運動をすることだ。 ここで話を聞いているトレ男の頭の中での選択肢を覗いてみよう。

  1. ただ話が終わるまで話を流したり、合わせたりしながら終わるのを待つ。
  2. 自慢話の中でも好奇心を持って得られる情報や知識はないかと質問したりする。
  3. 正直に用事を言って立ち去る。
  4. 着信が鳴った振りや忘れものを思い出したふりや腹痛であるふりをして立ち去る。
  5. お疲れ様でしたといい笑顔ですぐ立ち去る。
  6. 「そういえばまだ職場にいる○○さんが上司さんのこと呼んでましたよ」と言いその場から離れさせる 。

これがもしゲームみたいな仮想の世界なら間違いなく、3と5を選ぶだろう。 しかし、現実ではそれができる人は意外にも少なかったりするのではないだろうか。 選びたい選択を選べないことによって彼は感情の抑圧を感じていた。

表情では笑顔を崩さずにいたが、話を切り上げるタイミングを掴めないでいた。

上司の話を聞くことで読書や運動という時間を削っている。 というトレードオフの問題を認識しながらも、それを甘んじて受け入れざるを得なかったのである。

そんな時スマホアプリのL○NEの通知が鳴った。

(あっ、知り合いのBijinさん(仮)(美人)からだ!)

Bijinさん「今から飲みませんか?」

New!→Bijinさんと飲みに行く

0.5秒後のトレ男「L○NEの何かグッドみたいなスタンプ」

ーーこの時、ドーパミン(期待)を分泌しているであろう彼の選択に何が起こったのだろうか?

まず、優先されるものが変化したということ。 ここでも変わらず順位が本や運動になる人はとても強固な意志の持ち主だ。尊敬に値する。

美人というだけでトレ男の脳の選択は決まったのである。セルフコントロールというものは難しいものだ。

しかし、外部の誘因によって自分が望む行動もできるのだと、後にトレ男は学んだのであった。

「ごめんなさい上司さん。お腹が減ったので帰りますね!上司さんも今日はゆっくり晩酌を楽しんでお休みになってください。お疲れ様でした!」

こんなもんである。 男というものは、こんなもんである。 そうでない男の皆さんは申し訳ない。

人は誘因(インセンティブ)に反応する。 それに抗うことの難しさ。 美人にはそれだけの誘因の引力がある。 そして、その強烈な誘因によってトレ男は上司に関わる散々張り巡らせた選択肢という枝を バッサリ切り離すことができたのである。

その後、

Bijinさん「彼氏の相談なんだけど」

トレ男(恋人いたんですね・・)

よく考えれば美人に恋人がいる可能性は高い。そして、いなかったとしても自分に好意を抱く可能性は低い。これらのことから、トレ男は自信過剰な勘違い野郎になっていたことをこの時になって気づき、恥じた。

さて、上司の自慢話を聞いていたトレ男の中での誘因は「自分の時間」といったものであった。 しかし、それでは上司の話を切り上げるほどの勇気には至らなかった。

そこに「美人」という新たな誘因が付随する選択肢が増えたことによって、「自分の時間」以上の勇気を発揮してしまった。 ということは「自分の時間」より「美人」の方が誘因として強力だったと考えられる。

これが人間の本能の力なのかと感心すると同時に、誘因にもそれぞれレベルというものがあるのだと発見し嬉しくなったトレ男であった。